DX検定とは|出題領域から難易度、企業の活用方法まで解説


DXを積極的に推進している企業の多くが導入する「DX検定」。DXにまつわる幅広い知識が問われるため、社員のリテラシーチェックやリスキリングなどに役立ちます。本記事では、DX検定の出題領域・難易度のほか、DX推進人材の種類と推奨スコア、企業におけるDX検定の活用方法について説明します。
DX検定の概要について


 
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増える中、注目が高まっているのがDX検定です。     

まずは、DX検定の概要を見ていきましょう。

 

DX検定とは

DX検定は、一般社団法人日本イノベーション融合学会が2018年に創設した民間の検定です。DXに関わる人材を育成したい法人や個人を対象に、DXに関する知識の理解度を測ることを目的としています。

検定試験は毎年1月と7月の年2回実施されています。試験はオンライン形式のため、自宅や会社のPCまたはタブレット端末から受験することができます。受験の前提条件はなく、検定料を納めれば誰でも受験可能です。

試験は多肢選択式で、60分の試験時間において120問出題されます。

出題領域は「ビジネス」と「先端IT技術」

DX検定の出題領域は「ビジネス」と「先端IT技術」の2種類に大別され、各領域において幅広い知識が問われます。

各領域の主な出題項目を以下にまとめました。

<ビジネス>

分類 内容
次世代ビジネストレンド 健康や環境、金融、生活に関わる最新技術

例)再生医療、スマートグリッド、フィンテックなど
戦略・理論
(経営革新としてのIT)
ビジネスイノベーション戦略や、DXを活用した製品・サービス、ビジネスモデルの概念・理論

例)モノのデジタル化、デジタルツイン、D2Cなど
業務 (仕組みとしてのIT) 先端 IT 技術を用いたプロセスイノベーションの事例

例)デジタル物流、RPA、メタバースなど
商品 (商品としてのIT) 先端 IT 技術を用いたプロダクト・イノベーションの事例

例)3Dプリンター、チャットボット、ウェアラブルデバイスなど
サービス
(サービスとしてのIT)
先端 IT 技術を用いたビジネスモデル・イノベーションの事例

例)RPA業務改革サービス、デジタル通貨、オンライン診断サービスなど
IT機器 (道具としてのIT) 先端 IT 技術を用いた IT 機器・サービスのイノベーションの事例

例)オープンソースソフトウェア、クラウドコンピューティング、ビッグデータなど

<先端IT技術>

分類 内容
ロボットとスマートマシーン ロボット技術やスマートマシーンに関する知識

例)人型ロボット、ドローン、自動運転など
AI とソフトウェア 人工知能の概念や応用知識、開発知識

例)機械学習、ディープラーニング、 Python、VRなど
IoT とハードウェア AIスパコン・IoT デバイス、量子コンピューターなどに関する知識

例)AIスパコン、IoTデバイス、量子コンピューターなど
ビッグデータとデータサイエンス ビッグデータ解析や確率・統計に関する知識

例)データマイニング、NFT、データクレンジングなど
クラウドと IT 開発/運用 クラウドコンピューティングやシステム開発に関する知識

例)コンテナ型仮想化、ノーコード開発ツール、アジャイル開発など
サイバーセキュリティとネットワーク サイバーセキュリティの概念、対策方法やネットワークに関する知識

例)EDR情報セキュリティ、マルウェア対策、Web3.0、5G通信など

 

DX検定の認定レベルとDX推進人材の類型


 
2022年までに実施された過去8回の平均点は1,000点中545点となっており、成績優秀者は以下のような3つのレベルに認定されます。
  

スコア レベル 得点分布
800点以上 DXプロフェッショナルレベル 3%前後
700点以上 DXエキスパートレベル 10%前後
600点以上 DXスタンダードレベル 20%前後

 

例年、受験者の7割程度はレベル認定に達しません。比較的難易度が高い試験であるため、事前にしっかりと学習に取り組む必要があります。

また、IPA(情報処理推進機構)は企業におけるDX推進人材像を分類しており、それぞれの役割によって求められるDX関連の知識レベルは異なります。

ここでは、IPAが提示しているDX推進人材の種類と、DX検定における推奨レベルを紹介します。

 

プロデューサー

DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材。CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を含む。
 

DX検定の推奨レベル:850ポイント以上/プロフェッショナルレベル
(CDOは900ポイント以上)

 

ビジネスアーキテクト

DXの取り組みにおいて、目的設定から企画、推進、導入後の効果検証まで、関係者をコーディネートしながら一気通貫して担う人材です。
 

DX検定の推奨レベル:800ポイント以上/プロフェッショナルレベル

 

ビジネスデザイナー

ビジネスの視点や顧客・ユーザーの視点から製品・サービスの方針や開発プロセスを策定し、それらに沿ったシステムのデザインを担う人材です。
 

DX検定の推奨レベル:800ポイント以上/プロフェッショナルレベル

 

データサイエンティスト

データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、デジタル技術を駆使してデータを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材です。
 

DX検定の推奨レベル:750ポイント以上/エキスパートレベル

 

UXデザイナー

DXやデジタルビジネスに関するシステムについて、ユーザビリティに配慮したデザインを担う人材です。
 

DX検定の推奨レベル:700ポイント以上/エキスパートレベル

 

エンジニア/プログラマー

デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材です。
 

DX検定の推奨レベル:650ポイント以上/スタンダードレベル

 

企業におけるDX検定の活用方法


 
DX検定は、大手企業から中小企業まで幅広い業種・規模の企業で導入が進んでおり、様々なシーンで活用されています。
ここでは、企業におけるDX検定の活用方法を4つ紹介します。

 

DX検定とは社員や採用候補者のスキルを可視化

DX検定を導入すると、社員や採用候補者のDXに関する知識レベルを可視化することができます。分野別のスコアから、一人ひとりの得意分野や知識が不足している分野がわかるほか、平均スコアとの比較により自社のDXリテラシーのレベルを客観的に把握することができます。

リスキリングの推進

DXやデジタル技術に強い人材が不足している企業にとって、既存社員のスキルを再開発するリスキリングは、DXを推進する上で欠かせない取り組みです。DX検定によって一人ひとりの知識やスキルが可視化されれば、リスキリングの対象者や、優先的に習得させるべき分野を見極めやすくなるため、リスキリングをスムーズに進めることができます。

人材の適材配置

多くの場合、DXは様々な部署・人を巻き込みながら進める必要があり、その推進にあたっては多様な人材を適材適所に配置する必要があります。特に、DX推進の中心的な役割を担う人材は高いレベルの知識・スキルが求められるため、人材の選定にDX検定を活用するのもおすすめです。プロフェッショナルレベル、エキスパートレベルの人材であれば、広い知見をもとに効果的なDX施策を立案・推進することが可能です。

DX推進に対する社内の気運

DXを推進するには、会社としてDXに取り組む姿勢を社員に示し、社内の気運を高めることも重要なポイントです。DX検定を導入し、全社員のスキルチェックを行うことを周知すれば、「DXは他人事ではない」「自分も知識を習得しなければ」とDXに対する社員一人ひとりの意識を高めることができます。

 

DX人材の選定・育成にDX検定を活用しよう

DX検定を活用すれば、自社のDXリテラシーレベルが可視化され、その結果をリスキリングやDXの取り組みに活かすことができます。DX検定の出題範囲は幅広いため、すべての社員に受験を促すことでDXリテラシーの底上げにもつながります。

ただし、DX検定の難易度は比較的高いため、スタンダード以上のレベル認定を目指すには効果的かつ継続的な学習が不可欠です。DX検定の導入にあたっては、学習面のサポートも行いましょう。

 

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